第9章 婚約者は誰?
「なぁ、僕の誕生日祝ってくれんだよね?」
「もちろん」
「今度こそハワイ行かねー?」
「だから、そんな事したら五条家にバレるから!」
「もう飛行機取った、イヴ空けといて」
「え!!??」
イヴってクリスマスイヴでしょ! そんなあからさまなの絶対無理、高専はどうするの? 婚約者の件は大丈夫なの? って言ったけど、悟くんは気にする様子もなく、もうキャンセル料かかるからって詰め寄るようなこと言って電話を切った。
よくわからないけど、何かがおかしいような気がする。何とはうまく言えないんだけど。
ハワイに行くのはもはや決定事項みたいだ。会う度に旅行の話をされる。「祝ってくれねーの?」とか言われると断れない。あたしは考えた。
行くなら行くでこそこそ行くっていうのが一番怪しい。むしろ逆にはっきりと行ってきます宣言をして行った方がいいんじゃないか? と。
悟くんのお供としてハワイに同行するだけで、疑わしい関係ではないと告げて行こうって悟くんに提案すると「じゃあそうすれば」って言う。
……なんか軽くない? なんでこんな軽いの?
とにもかくにも悟くんを引っ張って奥様のところに出向く。
「奥様、夕凪です。失礼いたします」
「あら、なぎちゃん久しぶり。高専がんばってる?」
「はい、おかげさまで何とかやれています。あの……今度その……悟さんがハワイに行かれると仰って。お買い物する際に荷物を持ったり、ちょっとした身の回りのお世話をするために同行してもいいでしょうか? いろいろ誤解が生じるといけないので、前もって許可をいただきに参りました」
奥様はほんのり口角をあげてらっしゃる。いつもみたいに牡丹のようなお美しい顔で。こんな奥様を騙すのはしのびない。裏切るみたいで申し訳ない。ねぇ、悟くんもなんか言ってよ! 計画したの悟くんじゃん! って心で念じながらチラッと横を見る。