第14章 蜂蜜
「何時ごろ行くの?」
『んとね、明日は18時に着くようにだから、
17時にクラスが終わったらそのまま家に戻って研磨くんをピックアップして行く感じかな』
「…いつも家寄ってから行くの?」
『いつもは18:30とか19:00だから家に帰ってさっと自分のことしてからって感じ』
「…そか。 じゃあ、おれが大学の近くまで行くっていうのは……」
穂波の顔がぱああああっと明るくなる。
表情があからさまに、嬉しそうで、あからさますぎてかわいい。
「バスとか使って、できるの?」
『うん、うん。できるよ。近くのバスストップから行ける』
「…じゃあ行くよ。その方が時間余裕できるなら」
『時間のことはね、いいの、間に合えば。きっとスミスさんたちが家を出るの18:30とかだと思うし。
…言われた時間には間に合わせるけど、いつもバタバタしないようにしてくれてる。
でも研磨くんがバークレー来てくれるのは嬉しいから来てくれるなら来て欲しい』
「うん」
『…あ、でももっと時間のある時にも来てくれたらうれしい』
「うん、わかった。行く」
『うん!』
「…笑」
『…?』
いきなり饒舌になって、それから自分の要望みたいなのもこぼして。
でもそれが全然わがままとか贅沢な感じじゃなくて、なんでもないこと。
でもちょっとおれにもわかる。
なんでもないこととか。
自分の日常の中の風景にとか。
そういうところにこそやっぱり、いたら良いのになって思うんだよね。
それがだだもれなくらいに伝わってきて、
かわいくて、思わず笑ってしまった。
「…なんでもない。 オレンジうまいね」
『ねー♡ カリフォルニアのオレンジすき。ネーブル美味しい』
「うん、うまい」
食卓を囲んでのこの、何でもない会話もまた、
なんでもないようで、すごい尊いことなんだとか、今のおれにはわかる。
それから、こういうことこそ、
すきな人としたい、すきな人としかしたくないって改めて思ったり。