第14章 蜂蜜
ー研磨sideー
『シッターのバイトに行くんだけどね、研磨くんも一緒に来ない?』
「…え?」
そうそれでね、って全然おれには想像できなかった展開で聞き返してしまった。
…春学期はつめるから、カフェのバイトは週末だけにさせてもらうことになるのは聞いてた。
そこでちょうど話の来てたシッターのバイト2つをやることにしたのも、始めたことも聞いてた。
一つは穂波のお父さん、シゲさんの友人と少し似た境遇の人がシッターを探してるって。
その人は助産師じゃなくて看護師になるために勉強してて、実習が始まるから夜勤の間夜に子供をみてほしいとかなんとか。
恋人は近所にいるけど、ベーカリーの人だから夜勤から戻るまでに家を空けてしまうことになるとかなんとか。
もう一つは、雑誌の編集長とデザイナーの夫婦で、どうしても夜に外出することが多い夫婦らしい。
シッターはもともとずっと他で頼んでいたけど、アキくんの繋がりで話がきたとかなんとか。
どっちも毎日、じゃないから、単発で入る感じ。
…で、なんでおれがついて行くの?
「明日?」
『うん。あのね、いつもカズくんが一人になっちゃう時は、カズくんも一緒に行くの。
それは最初に条件じゃないけど、そうじゃないと無理っていうことを伝えてて』
「うん、そうだったね」
『それで、明日までお兄ちゃんいるし、明日はカズくんは行かなくていいんだけど、研磨くんどうかなって思って』
「………」
『研磨くんがお兄ちゃんとカズくんといたかったらもちろんそれで良いんだけど、なんか、どうかなって』
「…普通なら行かないけど、うん。行っても良いなら行くよ」
『うん、是非来てって言ってた、彼が来ることは話してたから』
「……編集長の方?」
『そうそう、編集長の。明日はパーティとかじゃないんだけど、友人夫婦たちと夕食に出かけたいんだって』
「へぇ。なんかアメリカっぽ」
『ふふ、そういうとこは、ほんと、わたしもそう思う。日本にはなかなかやってこない感覚な気がするよね。
シッターはあってももっとこう、長くずっとお付き合いするだろうし、
ましてや大学生にバイトで来てもらうなんてあまり、浸透しない気がする』