第12章 Hi!
ー研磨sideー
夕飯を食べ終えて、一緒に片付けてして、
そのままクロが台所であれこれやってるのを眺めながらぼんやりする。
福永が作ってくれた作業カウンターみたいなの。
窓際にある台所のコンロとかシンクとかとダイニングテーブルの間に作ってもらった。
下に、ゴミ箱とかも隠せるからこっちからはあんま、生活感見えなくっていい。
穂波の高さに合わせてあるからクロには少し低いけど、
それでも古民家にもともとある台所よりは高いからそっちにまな板とか持ってきてクロもなんかやってる。
さっき、クロが送迎会って言ってその時のことをぼんやり思い出してる。
送迎会って、出発の数日前にするものなのかもしれないけど、
なんとなく、出発間近の数日はいつも通りに過ごしたくって10日前で予定組んでもらった。
いくらなんでも10日前って…って言われたけど。
結果的にその日はいろんなとこからタイミングよくたくさんの人が集まれたから良かったと思う。
──「あ!研磨くんが穂波ちゃん泣かせよった!」
「泣かせるのはあかんって、再三言ってくるくせに自分してるやん」
そういう涙じゃないし、泣かせたわけじゃない。
泣いてるけど。
でも実際この人たちは、渡米前の穂波に会いたくてわざわざここに今日集まった。
「ほれ、穂波ちゃん俺とのハグまだやったやろ?
おいで、思っきし飛び込んでき?」
侑くんががやがやと腕を広げる横で、
治くんは
「ん、こっち来ぃ」
とだけいって小さく手でおいでおいでした。
今までの流れだと腕を広げた方に吸い寄せられていく、みたいな感じだ。
だから、流れ的には侑くんのはずだった。
でも穂波は治くんの小さなおいでおいでに吸い寄せられるように、
すーって、引き寄せられていってそれからぴとって。
ぴとって、はんなりと治くんに抱きついた。
これはもうハグなんかじゃなくて、エロい、誘いみたいな。
そんな感じで、控えめに、肌を寄せにいった。