第12章 Hi!
「穂波、それ持ってっちゃだめ!」
『えっ いや、そうなんだけどでもっ』
追いかけずにはいられない。
でも抱えてる紙袋からはまた数個落ちてっちゃう。
「…はぁ 穂波、落ち着いて、これ持って」
カズくんはスケボーを片腕に抱えてて、
それでもう片方の腕にかけてたエコバッグをわたしにばっと渡すと
ランプッシュしてデッキに飛び乗って、道路を滑り降りていく。
アメリカは、普通に道路でもスケボーに乗ってる人がいっぱいいる。
わたしは怖くてできないけど…
カズくんはすいすいと怖がることなく坂をくだって行って、
それからオレンジを追い越しその少し先あたりで歩道に乗り上げ…
『ひゃっ…!』
思わず目を覆いそうになる。
手で覆ってしまったら全てを撒き散らかしてしまうから、紙袋に顔を埋めそうになる。
でもそれも出来ず、短く声だけ出して、目は凝視してる。
目の前で起きそうなことを。起きていることを。
カズくんがきゅーっと歩道に向かって方向転換したタイミングで
前方から歩いて来ていたらしい男の人が先頭のオレンジを拾うべく小走りできて屈んだのだ。
これは、思いっきりぶつかる。
カズくんは結構なスピードを出してたし、どうしようこの距離じゃって、
まずわたしは紙袋をゆっくり道の端に置いてそれから走っていかなきゃ、って。
人ってこんなに一瞬の間にいろんなことを考えれるんだなってくらいにどこか冷静にいろんなことを考えた。
いろんなことを分析した。
「freeze!」
(動かないで!)
いつにないカズくんの大きな声。
こんな声初めて聞いた。
その声にピタッと固まる男性。
そしてカズくんはテールを思い切り弾いて、
前足でデッキを思い切りまくって、
中腰の男性を軽々と飛び越え、綺麗に着地する。
一瞬で起きたその出来事。
数秒の間に起きた事と、
能天気なことを言えばカズくんのあまりのかっこよさに。
『………』
声が出なかった。
そしてへなりと地べたに座り込んでしまう。