第12章 Hi!
ー穂波sideー
「穂波、おまたせ」
聞き親しんだ愛おしい声に振り返れば、カズくん。
用事が長引いて、ちょっとイライラしてるカズくん。
「研磨?」
『ううん、友達。白布くん』
「…え、あ、でもおれ待たせたし」
『…ん?』
「デート中に他の男と連絡とんなし、って思ったけどそもそもおれが待たせたんだった」
『………』
「…あぶな、自分のこと棚にあげるやつにはなりたくないのに。気をつけなきゃ。
…で、なんでそんな顔赤くしてるの?
穂波ってさ、絶対留まって居られないくせに、結構束縛されるの好きそうだよね」
『なっ…』
「実際の束縛に耐えれるかは知らないけど、ごっこ的な。束縛プレイみたいな?」
『カズくっ……』
かわいいかわいい弟みたいに仲良くしていたカズくんは
どんどん、どんどん、大人っぽくなっていく。
からかうことまで、どんどんと一丁前になって。
わたしは渡米早々に翻弄されてしまってる。
「やろ、ただただ楽しく、すべろ」
『ん!』
・
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それから数時間、滑ったり休んだり、
こっちの知り合いに遭遇して喋ったり、
かわいいかわいいキッズスケーターを眺めたり。
なんやかんやして過ごして。
昨日は外食したし、お互い学校始まる前に家でのんびり夕飯がいいね、って、
帰り際、街に車を停めて、食材をまとめて買っていくことにする。
明日明後日くらい分、いろいろ。
お気に入りのパン屋でパンも買って、乾物とか瓶詰めとか買って。
一度車に積んで、それから野菜と果物とお肉類を。
カズくんはオレンジジュースが大好きだから、
生搾りしちゃおっかってオレンジをたくさん買った。
カズくんがお肉とか卵の入ったの持ってくれて、
わたしが野菜と果物の入った紙袋を抱えて坂を降りる。
車は、この坂の途中に停めてある。
「いややっぱ、おれがそっちの方がいいと思う。今からでも遅くな…」
『あっ… あー!』
紙袋から溢れたオレンジが、ひとつ、ふたつ、みっつ……
とんとんとんっと少し跳ねてそれから、ごろごろと坂を転がり落ちていく。