第10章 ゴミ捨て場の決戦!
黒尾さんは私のジャージのファスナーに手をかけ、ゆっくりと下す
ジジジ…
ファスナーを摘む長く大きな指が首元に伸びてきて、私は思わず身体を強張らせた
「ふふ…安心しなよ、こんなとこで何もしないって…あ、それとも期待した?」
はぁ…はぁ…
触れられていないのに息が上がってきて
まるで微熱の時みたいに眩暈と動悸がする
「そんな顔してちゃダメだよ、煽ってんの?」
「…ちが…」
黒尾さんの顔が近くにある
顔が熱い
「歩ちゃんはかぐや姫みたいだね」
「…?」
黒尾さんは私の首元に光るネックレスに人差し指をひっかける
「突然俺たちの目の前に現れて、どうやったら君に振り向いてもらえるかってみんなが必死になってさ…
で、散々俺たちのこと振り回して、結局月に帰ってく」
ネックレスを指に引っ掛けたまま、息がかかるほど近くで黒尾さんが話す
心臓がバクバクして話の内容が入ってこない
「ねぇかぐや姫ってさ、願い通りのものを用意できたやつがいたらどうしたと思う?…そいつのものになったのかな?」
「…知りません」
「俺はさ、ちゃーんと歩ちゃんの願い叶えたよね?ツッキーに俺みたいなプレーヤーになって欲しかったんでしょ?お望み通り、ちゃーんとご指導してあげたんだから…
ご褒美ちょうだいよ」
わざと耳元で低めのトーンで囁かれる
はぁ…はぁ…
「…そ…れは、合宿の時にみんなの前で連絡先聞いて、チャラになったんじゃないんですか?」
辛うじて小さな声でそう反論した
すると艶かしい表情からフッといつもの黒尾さんに戻って
「バレた?」
と軽いトーンで言いながら、壁についた手を離す
あ、いつもの黒尾さん
とホッとしたのも束の間
「でもさぁ
好きでもない男に言い寄られてそーんな顔してるようじゃ…
先が思いやられるね、ねぇツッキー?そこにいるんでしょ?」
え?
血の気が引いていくのが分かる
今朝やっと…普通に話せるようになったのに…
黒尾さんは私から離れ、ツッキーに何か話しかけて去っていった
呆然と立ち尽くすツッキーと目が合う
「ツッキー!待って!」
呼び止めたけど、踵を返して走り出した彼が立ち止まることはなかった