第12章 君への思い
煉獄先生を連れ、俺はマルイの1階に行った。有名な菓子メーカーが贈り物用の商品を並べている。珍しそうな表情をしながら商品を見る煉獄先生を振り返る。
「どうですか、煉獄先生。」
「どのような風味の菓子なのか外見からは想像もつかんな!」
煉獄先生はたまに世間知らずな一面を見せる。人が当然知っているようなことを知らなかったりする。まるでこの世界に来たのが最近であるかのような…いや、さすがにそれはないか。とても良い家柄の坊ちゃんなのかもしれない。
「このミルフィーユとか美味しいですよ。」
そう言って俺は横濱フランセのミルフィーユを指さす。店員のお姉さんが楊枝に刺さった小さなミルフィーユを持ちながらニコニコと近づいてくる。
「ジャンドゥーヤ味、ピスタチオ味がとても人気の商品となっております〜〜ご試食いかがですかー?」
「煉獄先生、試食してみたら?」
煉獄先生はお姉さんの持つミルフィーユに目を丸くする。
「む!頂くとしよう!…む、これは…… 」
お姉さんから受けとったぱくっ、と楊枝を口に含む。初めてのお菓子に口を動かしながらしばしの間硬直する。そして、
「うまい!!!」
煉獄さんが大きな声で叫んだ。周りの客が一斉にこちらを振り向き、煉獄さんを見る。当の煉獄さんはそんな周りには気付かず、「これは良い菓子だ!」とミルフィーユに夢中になっている。俺は周りからの視線に汗をかき、「先生、鬼滅の刃の煉獄さんにほんとそっくりですよねー」とわざとらしく大きな声で言った。周りの人達が徐々に自分たちの買い物に戻るのに俺は胸を撫で下ろす。
「この菓子をもらおう!!!」
「煉獄先生、飴買うんじゃなかったんですか」
「これはまた別に贈る!!!中彩にも食べさせてやりたいのでな!!!」
煉獄先生は嬉しそうにそう言って会計を済ませると紙袋を受け取り、「待たせたな、斉藤少年!他の品も見るとしよう!」と笑った。煉獄先生、本当に中彩さんのこと好きなんだな…
その後も煉獄先生と色々なお店を見て回った。その度に「中彩に食べさせてやりたい!」と言ってお菓子を買いそうになるので、何度か止めるのに苦労した。そんなにお菓子ばっかり貰っても困るだろ…俺はつい笑ってしまった。
「む、斉藤少年、なにかおかしなことでもあったか?」
「なんでもないです、行きましょう」
