第8章 かまどベーカリー
「"かまどベーカリー"か!最近は会えていないが、溝口少年は元気だろうか!」
「“かまどベーカリー“っつってんだから竈門だろうがァ!」
「うむ!分かってはいるのだが、どうしても溝口少年と呼びたくなってしまうのだ!許して欲しい!」
「それは本人に言えェ…」
かまどベーカリーの息子、竈門炭治郎。
不死川の弟、玄弥の友人で、子供の頃はよく弟繋がりで遊んだりしていた。
俺が高校へ上がってから遊ぶ事はなくなってしまったが、パン屋の方へはよく行っていたので、店の手伝いをする炭治郎と時々顔を合わせていた。
最近はタイミングが合わずに会えていなかったが、元気だろうか。
「その竈門んトコに迎えに行くってェのは冨岡の知り合いかなんかかァ?」
「もとは俺の知り合いの女の子だ。色々あって冨岡と親しくなったのだ」
まだもぐもぐと食事中の俺に代わり、伊黒が説明してくれる。
よく見ると、俺以外は皆ほぼ食べ終わる頃になっていた。
いつ食べていたのだろう…
「訳あって、最近キメツ学園に転校した。馴染めるか不安だったようだが、もうその心配はしなくて良さそうだな」
そう言やァ…と、不死川がふと思い出したように話し始める。
「少し前に玄弥が言ってたなァ、転校生がどうとかって。じゃあソイツの事だなァ」
「そうだろうな」
「『可愛い子が来た』って噂になってるらしいぜェ」
「…なんだと?」
不死川のその言葉を聞いて、伊黒は不死川をギロッと睨み付ける。
不死川も条件反射のように「ア"?」と伊黒を睨み返した。
不穏な空気が漂っている。
何も起きなければいいが…
「貴様の弟はそんないやらしい目で柚葉を見ているのか。けしからんな。許せん!」
「健全な17だろォがァ!ンな事言うならソイツ迎えに行く冨岡はどうなんだよォ!」
あぁ、どうか俺を巻き込まないでくれ。
最後の一口を食べ終え、食後の茶を啜りながら祈った。