第52章 波打つグルーヴ【渋谷事変】
「メグ、この方向って……」
伏黒の後を追いながら、詞織は首を傾げた。釘崎や順平、真希たちが派遣された方向だ。
「家入さんから話 聞いた。【帳】の外で大量の補助監督が襲われて死傷者多数。伊地知さんもやられてた」
「伊地知さんが……? 無事なの?」
あぁ、と頷く伏黒にホッと安堵の息を吐く。伏黒の話によれば、伊地知は星良の【反転術式】を受けた後、家入のところへ運ばれたらしい。
「あれ? 七海さんが伊地知さんと合流するって……」
「たぶん、伊地知さんがやられたのに最初に気づいたのは七海さんだろ。そこから星良さんに連絡がいって、灰原さんの【折神】で家入さんのとこに運ばれた」
おそらく、伏黒の推測通りだろう。だが、伊地知が倒れ、補助監督に死傷者が出ているとなると、連絡手段は壊滅的だ。
「七海さんは禪院班に五条先生の封印の件を伝えに行ったってこと?」
「その可能性が高い。七海さんがいないなら別にそれでもいい。一番の目的は真希さんだ。呪具は俺が全部 預かってるからな」
確かに、状況は大きく変わっている。真希も呪具一つでは心許ないだろう。
渋谷マークシティに到着した詞織たちは中へ入り、辺りを見渡す。激しい戦闘の痕跡、疲弊して傷だらけの一般人たちの中には死亡者も大勢いた。
「詞織、堪えろ。キリがねぇ」
手当てをしようと踏み出した詞織の肩を伏黒が引き留める。眉間のシワが深く、助けたいと思っているのは伏黒も同じなのだろう。