第52章 波打つグルーヴ【渋谷事変】
「滞空できるんだもんなぁ。俺でも上に逃げる」
いち早く呪霊の行動を先回りした直毘人が上空にいる陀艮の背後をとっていた。
殴る。殴る。ひたすら殴る。
吹き飛んだ先にはすでに直毘人がいて、床に叩きつけられるよりも早く直毘人は陀艮を殴りつけた。
――【投射呪法】
禪院 直毘人の持つ術式は、一秒を二十四分割、己の視界を画角とし、あらかじめ画角内で作った動きをトレース(後追い)する。
術式発動中、直毘人の手のひらに触れられた者も二十四分の一秒で動きを作らねばならず、失敗すれば動きがガタつき、一秒間フリーズしてしまう。
作った動きは途中で修正できず、過度に物理法則や軌道を無視した動きを作れば自らもフリーズするというリスクがあるが、直毘人は天性のコマ打ちセンスと時間間隔でそれを可能とした。
圧倒的速度――相手が術式を発動する隙を与えない。
――最速の術師。
五条 悟を除き、禪院 直毘人はどんな術師よりも速い。真希もそのことは知っていたが、目の当たりにするのは初めてだった。
【天与呪縛】により、スピードもパワーも体術も自信があったが……とてもついていける世界ではない。
不意に、呪霊が手を組んだ。
「させんよ」
ドドドドッと直毘人が身動きを取れないほどの連撃を加える――そして、不意に「ハッ」と目を見開いて動きを止めた。陀艮の腹に紋様が浮かぶ。