第51章 モレンドに敬意を表して【渋谷事変】
「――来い」
ゴポッと口の端から血を吐き出す虎杖に、脹相は赤い拳を構えた。
鋭く打ち出した拳に虎杖はしっかりと対応してくる。押し切れない。
脹相は膝を折って身を低くし、足払いを仕掛けた。しかし体勢を崩すには至らず、身を起こした隙に虎杖が個室に入って鍵を掛ける。
今さら隠れたところで、こんな脆い壁が障害になどなるはずも――……。
――バキィッ‼
唐突に壁が砕け、虎杖の蹴りが顔面に入る。とっさに血液で覆った拳で受け止めたが、足で首を捕らえられ、そのまま床に打ち倒される。
畳みかけるように虎杖の猛攻は続き、迫る右手の拳を防いだところへ、左の拳が脹相の腹に決まった。
虎杖は最初の【穿血】で左腕を負傷している。あの二度の衝撃が起こった左の打撃。あれは痛みで呪力操作が甘くなっていた証拠。
右手を囮にした左の拳――狙いは悪くない。
渾身の一撃に瞠目する虎杖に、脹相は拳を頭上から振り下ろす。さらに、衝撃にふらつく虎杖の腹に一発 入れ、奥の壁まで吹き飛ばした。大量の血を吐き、虎杖の身体が床へ沈む。
「残念だったな」
左の拳がくることを直前で見切り、腹に血の鎧を纏わせて防いだのだ。
「まだ息があるな」
虎杖が立ち上がる気配はない。だが、辛うじて呼吸をしている。
「あの世で弟たちに詫びろ」
壊相、血塗――二人の顔を思い浮かべ、トドメを刺すべく、脹相は憎悪と共に拳を握りしめた――瞬間、ドクンッと身体が不自然に脈を打った。
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