第51章 モレンドに敬意を表して【渋谷事変】
――22:24
首都高速三号 渋谷線 渋谷料金所
メカ丸――与 幸吉の視覚から脹相の姿が消えた。
ゆっくりと瞼を開いて頭上を見上げると、吸い込まれそうなほどの暗い夜空が映る。
脹相を誘い込むことには成功した。
【赤血操術】は術式効果を上げるため、常時 血液の凝固反応をオフにしている。そのため、脹相の血液は他の者より水に溶けやすい。
加えて、水に晒された血液の中では、浸透圧により赤血球が膨れ、細胞膜が破れていく。血液の約四十五パーセントを占める血液成分がコントロールできなくなり、【百斂】は解かれる。
自分の狙いが外れていなければ、水浸しになった脹相は体外での血液操作は不可能になり、【赤鱗躍動】のような体内での血液操作で完結できる術しか使えない。
虎杖に説明をしている時間はなかったし、説明したところで分かるかも怪しいが――……それでも、術師として現状を理解するくらいはできるはずだ。
「ふぅ……」
「お疲れ」
ビクッと思わず肩を跳ねさせ、与は声の方へ視線を向けた。
「何だ、アンタか……」
白衣の女性――家入 硝子の姿にほっと肩の力を抜く。
十月十九日に瀕死の重傷……というか、ほぼ致命傷を負っていたところを神ノ原 星良に助けられ、そのまま京都校ではなく、東京校の家入のところまで連れて来られた。
しばらくは目を覚ますことができず、ようやく意識が戻っていくつか検査を受け、これから事情聴取が始まろうとしたところへ、今回の渋谷の騒動が始まったのだ。