第51章 モレンドに敬意を表して【渋谷事変】
「……別に、何も」
でも、と虎杖は続けた。
「泣いてたよ」
罪の意識が込み上げ、固い声音でそう言うと、男の顔から表情が消える。そして、次の瞬間には憎悪で歪み、横に一線刻まれた刺青がドロリと溶けた。
「壊相(えそう)! 血塗(ちけず)! 見ていろ‼ これが――オマエたちのお兄ちゃんだ‼」
男から凄まじい呪力と殺気が溢れ出し、空気を震わせる。
虎杖は地を蹴り、素早く拳を突き出すもまた腕で受け止められた。突き放すように身を引き、上空に向けて蹴りを放つが、それも躱されてしまう。
速さで押し切ろうと畳みかけるべく拳を構えたが、両手を挟むその仕草に慌てて距離を取った。両手から放たれた血のレーザビームが虎杖を襲う。
チリッと紙一重で避けるが、さらにビュッと続けざまに放たれた血のレーザビームを走りながら躱した。
クソッ、また距離を取らされてしまった!
追撃が一旦 落ち着いたところで向き直ると、男は空中に血液の玉を何発分も生み出し、パンッとそのうちの一つを両手で挟む。
――来る!
あの血のレーザビームは速すぎる。回避率は五分といったところか。動体視力には自信があるが、それでも完全には見切れない。勘が外れて頭にでも食らってしまったら――死ぬ。
なら せめて――発射のタイミングはこちらで決めさせてもらう。
虎杖はトッとその場で軽く跳び、身体を浮かせた。