第51章 モレンドに敬意を表して【渋谷事変】
渋谷駅に入った虎杖は、地下五階を目指して走りながら戸惑っていた。
五条のいる地下五階へ進んでいるつもりだが、道が間違っていないか不安になってくる。
――『今 渋谷駅構内は正(まさ)に伏魔殿。特級とソイツらが連れてきた呪霊、夏油の息のかかった呪詛師。そして 改造人間と一般人』
そう、メカ丸が言っていた。けれど、見たところ誰もいない。駅の中に大勢が閉じ込められているのではなかったか。
それなのに、呪霊も呪詛師も、改造人間も一般人も――誰もいない。
誰かが先に来ていたのか?
いや、それなら戦闘の痕跡があるはず。
だが、破壊痕や血痕も一切 見当たらない。
いや、考えている場合ではない。
今は五条を助けることだけ考えて……。
そう思いながらひたすら足を動かし、虎杖は下りエスカレーターを駆け下りた。そこで、ふと足を止める。
見たことのない男――髪を二つに結い上げ、顔に横一文字の刺青を入れた、法衣姿の男だ。
男はこちらを見るや否や、手のひらに血のように赤い玉を生み出す。
――【赤血操術 百斂(びゃくれん)】
血液を加圧し、限界まで圧縮する技。
【百斂】で圧縮した血液を一転から解放し、撃ち出す。呪力で強化された血液の初速は音速をも超える、【赤血操術】の奥義。
その名を――【穿血】
男は生み出した血をパンッと手のひらで挟み、撃ち出す。
音速を超えて放たれたレーザービームのような血液に、虎杖は両腕を交差して受け止めた。しかし、勢いを殺すことはできず、弾丸は虎杖を押しやる。
――ヤバイ、貫かれる!