第50章 止まらずに進むセグエンテ【渋谷事変】
「真希さん!」
釘崎に呼ばれ、真希は槍を旋回させて血を振り払い、床に下ろした。その後ろには、【帳】の外で待機していたはずの新田の姿もある。
ちょっと、と順平の元まで誘導し、全員を集めた。
「で、どうした? 何かあったか?」
待機していた新田が【帳】の中にいる。そのことについては言及しない。何かあったから来たのだろう。
「実は、補助監督だけで連絡網を作って、常に連絡を取れるようにしようって伊地知さんと電話で話してる最中だったんスけど……急に通話が……」
「それって……誰かに襲われたってこと……⁉︎」
新田の話に順平が顔を青ざめさせる。
「たぶん伏黒たちと分かれた後だから、今 一人でヤバいかもって言いにきたのよ」
……五条はバカだが負けることはまずないが、状況がどんどんキナ臭くなってきている。
とにかく、伊地知の安否を確認して、怪我をしているようなら家入か星良の治療を受けさせなければ。
しかし、補助監督が襲われている現状で、新田一人に行かせるのは危険。だから新田も戦闘中と分かっていて【帳】の中まで来たのだ。
「野薔薇と順平は明さんと伊地知さんのところに行け。携帯が使えねぇんだ。補助監督がいねぇと話になんねぇ。あたしはとりあえずココを片づける」
屋外……【帳】の外の方が、いざというときに逃げようがあるだろう。
何があるか分からない。せめて、後輩だけは助けなければ。
「あの、禪院さんは……?」
「ジジイはほっとけ。やる気がなさすぎる」
順平の言葉に直毘人の方へ視線を向けると、壁を背に寝っ転がって、ビールの缶を開けていた。
「おい、酒」
「え……?」
イラッと頬を引き攣らせる釘崎、ドン引きする新田、馬鹿正直に反応する順平に、「無視しろ」と短く言い放つ。
「さっさと行け。油断するなよ。この先 何が起こっても不思議はねぇからな」
気を引き締めるように言って、真希は三人を送り出した。
* * *