第50章 止まらずに進むセグエンテ【渋谷事変】
『七海、どうしたの?』
「伊地知君が刺されて倒れていました」
『伊地知君まで⁉ いったい何が起こってるんだ……⁉』
伊地知、“まで”……その言葉に引っかかりを覚え、七海は眉を寄せた。
「どういうことですか?」
『【帳】の外で、補助監督が襲われてるみたいなんだ! 何人も刺されてて……死亡者も大勢 出てる。去年の百鬼夜行のときみたいに、星良ちゃんが片っ端から応急処置で【反転術式】を掛けて、僕の【折神】で家入さんのところに運んでるけど……こんなにいるんじゃキリがないよ……!』
灰原の話に、スマホがミシッと音を立てる。そこへ、電話の向こうから『七海さん』と星良の声が呼びかけてきた。
『伊地知さんが倒れてる場所、教えてください。この治療が終わったらすぐに行きます。大丈夫……大丈夫だから……』
微かに声が震えている……『大丈夫』の言葉は七海にだけ向けられたものではない。自分にも言い聞かせているのだろう。
助けられなかった人間もいると灰原は言っていた。【反転術式】で呪力を大量に消費しているからだけではない。死を目の当たりにして、心身ともに疲弊していることだろう。
それでも、一人でも多くの命を救おうと、灰原と共に駆けまわっている。