第50章 止まらずに進むセグエンテ【渋谷事変】
――21:44
東京メトロ 渋谷駅
十三番出口側(【帳】外)
――「一級である私でしか通らない要請がいくつかある。外に出て伊地知君とそれらを全て済ませて来ます」
そう言って虎杖たちと分かれ、【帳】の外へ出た七海が見たのは、大量の血を流して倒れ伏す伊地知の姿だった。
脳裏に高専二年の夏の出来事が蘇る。
自分を庇い、血を流して倒れた灰原が固く目を閉ざし……その身体がどんどん冷えて力が抜けていく様が。
五条が駆けつけ、星良が【反転術式】で命を繋ぎ、星也が真言を唱え続けた。あのとき、歯車が一つ噛み合わなければ、彼は間違いなく死んでいただろう。
己の不甲斐なさに腹が立つ……などということは、今までも、そして これからも、自分の人生ではあり得ない。
ただひたすらにこの現実を突きつけてくる諸悪を――ただひたすらに……。
「――ナメやがって」
それでも、燻る怒りを無理やり沈め、七海はすぐに伊地知の容体を確認する。呼吸は浅いがまだ死んではいない。だが、何度も刺されたのか、腹部の出血が激しい。
家入のところまで運ぶのが一番だが、動かせば失血死する可能性もある。
七海はスマホで ある人物へ電話を掛ける。
『もしもし! 星良ちゃんの携帯です‼』
「その声は灰原ですか?」
先ほど灰原が死にかけた任務を思い出したからか、彼のうるさいほど元気な声に安心している自分がいた。