第50章 止まらずに進むセグエンテ【渋谷事変】
「【帳】は上がった。上の連中は逃げた後かもしれねぇだろ。猪野さんを連れて一度 外に出るぞ」
できれば 家入のところに連れて行って安静にさせたい。
「……そう、だね……」
頷く詞織の隣で虎杖も深く息を吐き出し、無理やり頭を冷やしているようだった。
「猪野さんを頼む。俺は先に駅に向かう」
「それなら わたしも……メグは猪野さんをショーコさんのところに……」
だが、虎杖は「いや」と詞織を遮った。
「一人でいい。今の渋谷は何が起こるか分からねぇ。猪野さんを連れて行くなら、一人より二人の方が安全だろ」
「それはユージだって!」
確かに、虎杖の言う通りだ。呪霊やら改造人間に襲われたら、状況によっては猪野を庇いながら戦うのは難しい。
そう考えれば、虎杖とはここで分かれるのがベスト。
伏黒は言い募ろうとする詞織を止め、「……分かった」と了承すると、彼女も唇を噛んで引き下がった。
「「でも」」
「『また死んだらゆるさない』、『そのときは俺がオマエを殺す』だろ?」
重なった伏黒と詞織の言葉を先回りし、虎杖がニッと口角を上げる。
交流会で言った伏黒と詞織の言葉だ。
台詞を取られて思わずムッとする伏黒に対し、詞織は服の裾をギュッと掴んで俯いていた。
「心配すんなって! メカ丸もついてるし‼」
「メカ丸、何も言わないけど」
うっ…と虎杖が気まずそうに言葉を詰まらせる。
「寝てんのかな~」と誤魔化すように視線を彷徨わせる虎杖に、伏黒は大きくため息を吐いて立ち上がった。
「『死んだら殺す』――分かってるなら それでいい」
「ユージ、“後でね”。“絶対”だよ」
猪野を乗せた【鵺】が翼をはためかせて飛び上がる。
応、と力強く頷く虎杖に背を向け、伏黒と詞織は【帳】の外へ向かった。
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