第50章 止まらずに進むセグエンテ【渋谷事変】
七海に任された以上 三人は放っておけないが、コイツらを引き連れて行くのはマズい。一番いいのは、瞬殺して後輩たちと合流だ。
「婆ちゃん、今の……」
「あぁ。“奇遇”よのぅ」
何か仕掛けるつもりか?
だが、事実に即し、己を律する。
慢心は――ない。
「【二番――『霊亀』】」
【霊亀】によって生み出された水を足場に、滑るようにして移動する。
何かをやろうと呪文を唱え続ける老婆を狙うが、ニットの男が身を挺して庇い続けた。
男に肘を叩き込むと、振り払うようにして投げ飛ばされる。水で自身を受け止めさせ、そのまま着地した。
男の戦闘力は大したことない。けれど、どれだけ攻撃を受けても、傷だらけになっても、何が何でも男は老婆を守ろうとする。
その間も、老婆は手を合わせて数珠を擦りながら、呪文を唱えることをやめない。
何かがある――急いだほうがいいな。
不意に、老婆に膨大な呪力が溢れた。
なんだ⁉ 雰囲気が変わった⁉
「もうええぞ」
呪文を唱え終わったのか。老婆の呼びかけに、ニットの男が「分かってるよ」と言ってポケットからカプセルを取り出した。その中身を取り出し、大きく口を開いて呑み込もうとする。
――させるか!
「【獬豸】!」
老婆に【獬豸】のドリルを放つが、それより早く、ニットの男はゴクリと喉を嚥下させた。
「――【禪院 甚爾】」
放たれた【獬豸】が素手で掴まれ、猪野は息を呑む。