第50章 止まらずに進むセグエンテ【渋谷事変】
「なぜ、私の推薦にこだわるんですか? 君の術式なら、準一級くらいすぐなれます」
そう、七海に言われたことがある。
それでも、猪野は頷くことをしなかった。
呪術師のような血生臭い職業は特に、“筋”が大事だと猪野は考えている。だが、自分は頭が悪いから、筋の通し方が分からなくなるときがあるのだ。
だから、迷ったときはこう考える。
――七海サンならどうするか。
それなのに、彼に認められず一級になるのは嘘だろう。
七海に認めなければ意味がないのだ。
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「孫よ」
「うん。分かってるよ、婆ちゃん」
老婆に呼ばれ、ニットの男がこちらへ近づいてくる。
「カワイイ後輩もできたことだし、ここいらで活躍して、ボチボチ俺も―― 一級になっちゃうぞ」
猪野はニット帽を深く下げて顔を覆った。
呪力を練り、両手を突き出す。
――【来訪瑞獣(らいほうずいじゅう) 一番――『獬豸(カイチ)』】
現れたドリルの先端がニットの男と老婆に向けて放たれる。ニットの男が手を合わせて何かを唱え続ける老婆を抱えて逃げるが、ドリル――【獬豸(カイチ)】がホーミング弾のようにグンッと曲がって二人を追尾した。
ニットの男は老婆を下ろし、腕で【獬豸】を受け止める。プシッと鮮血が弾けた。
【降霊術 来訪瑞獣(らいほうずいじゅう)】――顔を隠すことで自らが霊媒となり、四種の瑞獣【獬豸(カイチ)】、【霊亀(レイキ)】、【麒麟(キリン)】、【竜(リュウ)】の能力を降ろし、使用できる術式だ。