第42章 鮮明なリバーブ【呪術廻戦0】
「星也」
病室にやって来た五条に、星也は緩慢な動作で振り返った。辺りには古い書物がいくつも散乱し、振り返った拍子に足の先がぶつかる。
「……任務、ありがとうございました」
「ひどい顔だね。何日やってたの?」
「……四日」
もちろん、ずっとやっていたわけではない。人より呪力量が多いとはいえ、無限ではないのだ。
一度 家に帰って、休息の間は神ノ原一門の文献を読み漁った。
どこかに手がかりはないか。似た呪いは存在しないか。隅から隅まで目を通した。
「伊地知さんが任務を調整してくれて……って言っても、それも五条先生が代わってくれたんですよね」
五条自身も任務を抱えているはずなのに、自分の分まで肩代わりさせてしまって……彼も相当 無理をしたはずだ。
「オマエの特級案件の任務を代われるのなんて、僕以外にいないでしょ。いいよ、気にしなくて。そのうち きっちり返してもらうから」
冗談めかして言う五条に、「そうですか」と面白味のない返事しかできなかった。
「まだ目覚めさせられないの? 解呪や封印は【陰陽術式】の十八番(おはこ)でしょ」
「…………できない……」
消え入りそうなほど小さな声が喉から出てくる。
今までこんなことはなかった。
手応えもまるでない。呪力も辿れない。
手口が巧妙で、狡猾な相手だ。
「大元を叩かないと解けない呪い、ってことだね。そういえば、夕方頃 恵と詞織が来たよ。津美紀をこんな目に遭わせたヤツを祓ってやるから稽古をつけてくれってね」
「はは……頼もしいな……」
「津美紀は夜の八十八橋に行った話は星良から聞いた?」
「……聞きました」
この辺りで有名な心霊スポットだ。
だが、あそこには【呪い】の気配はあるが、明確な実害はない。
それに……。
「……あそこが【呪い】の発生源なら、解呪できます」
「そうだね」
根拠はそれだけではない。
星也は津美紀に【守護】のまじないを施し、星良も護符を持たせていた。少なくとも、外部から呪力を用いて害されたのなら、どちらかが反応するはずだ。
だが、【守護】にも護符にも発動した形跡はなかった。