第55章 永久を願うコン・アモーレ【渋谷事変】
「僕は星良ちゃんみたいに、【反転術式】なんて難しいことはできない。でも、手伝わせてほしいんだ。僕の呪力、使える?」
「灰原さんの、呪力……?」
他人の呪力を使って術式を使うなど、普通ならできないだろう。だから、誰も思いつかないはずだった。
だが、星良が使っている【書字具現術】は、【陰陽術式】の派生の術式。既存の術式の枠を外れ、あらゆる不可能を可能とするべく、稀代の陰陽師・安倍 晴明が編み出したものだ。
「……できる?」
「そんなこ、と……」
そんな都合のいいことができるわけない。そう感じたのは星良も同じようで……だが、その夜色の瞳に期待が過ぎったのを灰原は見逃さなかった。
「できるんだね」
ほぼ確信を持って言うと、星良が「……いいんですか?」と逆に尋ねてくる。
「七海にはいつも助けてもらってるし、今度は僕が返す番だ。それに、二人の結婚式で友人代表のスピーチをするつもりだし、こんなとこで死なれちゃ困るよ」
ねぇ、七海。君はいつも無理しすぎだよ。
でも、名前を呼んでくれたのは、ちゃんと聞こえてた。
「七海、死んじゃダメだよ」
星良は灰原にとって、血は繋がらないが、大事なもう一人の“妹”だ。
ずっと二人のことを応援してきた。
だから、幸せになった二人の姿をちゃんと見せてくれなければ……。
……そうじゃなきゃ、“諦めた”意味がない。