第1章 一夜目.5時限目の空
—14小節目—
5時限目の空
翌日、それはよく晴れた金曜日。一織は、エリと昨日話した内容を、実行に移さんとしていた。朝のホームルームで、教師とクラスメイト達に席替えを進言したのだ。反対の声は上がらずむしろ逆で、席替えを希望する者は多かった。善は急げと、簡易的なクジを用いた席替えが行われる。
今日は金曜日である為、エリが現れるのは5時限目の途中である。一織は自らの引いたクジを握り締め、エリの分まで祈った。どうか、隣の席になれますように。
「この場にいない中崎の分は、先生が一応引くぞー。えー…と?26番だな。窓際の真ん中辺りか。まぁまぁだな」
黒板に描かれた、沢山の四角。机を表しているその四角の中には、漏れなく数字も記されている。祈りを終えた一織は、自分のクジをそっと開く。
窓際である26番の隣は、それすなわちたった一席しかないということ。その唯一の席の番号は、1番。一織が引いたクジにあった番号は…
4番であった。
4番は、窓際の最後列。エリの席の、三つ後ろの席である。彼女の後頭部を視界に入れながら授業を受けるのも悪くはないが、やはり隣席とは雲泥の差だ。一織は、自らの運のなさを一人嘆いた。
だがしかし。天は恋する青年を見捨てなかった。一織の前に、救いの糸を垂らす男が現れたのである。その救済者、いや神は、一織の目前で自らのクジを開いて見せた。そして、ひと言。
「イエーィ」
左手でブイサインを作った環。彼の持つその紙に、一織は飛び付いた。それもそのはず。環の引き当てたそのクジは、喉から手が出るほど欲しい1番だったのだから。