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十六夜の月【アイナナ短編集】

第1章 一夜目.5時限目の空




『でも結局、その話を私は受けることが出来なかった。せっかくMAKAさんに選んでもらったのに、真ん中に立てなかった。
元センターの子との関係性が崩れることが怖くて。どうしても自信が持てなくて。そんな話をMAKAさんにしたら、物凄く怒られた。人の夢を食ってでも、前に出ないでどうする!って。あと、もっと一緒にやって来た仲間を信用しろって』


エリは尊敬する人物に絞られ、それは落胆した。夢を諦めそうになった。そんな時だ。一織が新センターとして行ったライブを観たのは。自分とは違い、仲間を信頼し、そして自らの力を信じてファンを魅了する彼の姿に、心を打たれないはずがなかった。


それから二人は、体育館二階部分のギャラリーに上った。そこは椅子こそなかったが、球技大会の時にエリが自分の名を呼んで応援してくれたことを思い出す。
そんな、またも思い出のある場所で二人は会話を始めた。


『これで、私の手の内は全部晒したかな。どうだった?』

「興味深いお話でしたよ。お返し出来る物がなくて心苦しいくらいです」

『こんな時間にこんな場所の探索付き合ってくれただけで十分。って、言いたいところだけど…実は私、欲しいものがあるんだよね』

「何でしょう。私に用意できる物でしたらいいのですが」

『大丈夫。むしろ、一織くんにしか用意出来ないものだから』


そう言われ、彼は懸命に心当たりを探す。だが結局、それが何なのか正解に辿り着くことは出来なかった。
それは何ですかと、一織が問おうとした瞬間だった。その唇は、熱くて柔らかいもので塞がれてしまう。

キスをされたのだと気付いたのは、エリの唇が離れた後だった。

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