第1章 一夜目.5時限目の空
「さっきから思ってたんだけど、そのお友達は随分と自信があるんだな。ずっと “恋人関係になれば” とか “恋人同士になっても” って言い回ししてるだろ?告白してフラれる可能性なんか、1ミリも考えてなさそうっていうか」
「まぁ、彼が告白すればほぼ間違いなく付き合うという流れになると思います」
「わーすごーい。その自信、お兄さんにもちょっと分けて欲しいもんだ」
エリの気持ちが、自分の方に向いているという自信はあった。しかしそれ以外の自信は、一織は持ち合わせていなかった。
エリの隣に立つべき人間は、もっと他にいるのではないか。自分以外の誰かの方が、エリを幸せにしてやれるのではないか。そんな考えが、どうしても頭を掠めるのだ。
「イチは、賢くて優秀だからな。その分、色んなこと考えちまうんだろ。山ほどの選択肢に押し潰されそうになった時は、思い出してみればいい。
自分が、ファンや周りの人間からどんなふうに呼ばれてるのかを」
「!!
……ふふ、はい。ありがとうございます。二階堂さんの助言、頭の隅に置かせてもらいますね」
「おう。そうしてちょうだい」
「ですが何度も言うように、これは私自身の話ではなく学友の話なので、その助言が彼に当てはまるかどうかは別問題なん」
「もういいっての!そのガバガバな前提は!」
まぁいいや、と。大和は、尻ポケットから財布を取り出した。そして、その中に入っている “ある物” を目視で確認してから再び一織に向き直る。
「自信があるんだかないんだかよく分からないお友達に、俺から御守りを進呈します」
「御守り?」
「そう。はい、手出して」
大和は差し出された一織の手に、財布から取り出したそれを載せた。一辺数センチサイズで正方形の薄いそれは、一織を凍り付かせた。
「っ、あ、あなた!未成年になんてものを!!」
「未成年だから。だろ。しっかりと責任が取れる大人の男になるまでは、必ず持っときなさい」
大和は、言いながら自室に向かって歩き出した。一織は、その背中に向かって礼を告げる。彼はこちらに振り向きはしなかったが、右手を上げて答えてくれた。
手の平に鎮座する小さな四角を、一織はしばらく見つめるのだった。