第21章 スルタンコラボ企画 〜睡蓮の昼寝〜
「…これからは、…俺も見聞を広げよう」
恥ずかしそうに呟くアシルに
天元はにっこりと笑った。
「誰かを大切に思った方が自分のためにもなる。
知識なんかじゃまかなえねぇから
ちゃんと心で感じろよ」
「…わかった。努力する」
そう素直に言ったアシルは
テーブルに置かれた水差しに目を止めた。
「飲んでも構わないか?」
天元にことわりを入れ
承諾を得てから、そばのグラスに注いだ。
その水をぐいっと煽った。
「…レモン水…?」
アシルは
手にしていたグラスをマジマジと見つめた。
「え…?」
私は天元に目を向けた。
「アレ飲むたびに、お前思い出すんだ」
アシルには聞こえないくらいの声で、
いたずらっこのように笑ってみせる。
天元は何も変わらない。
あんな話を聞いた後なのに…。
私はといえば、
完全に萎縮している。
罪の意識が払拭できない…
「俺ももらおうか」
アシルに歩み寄り
水差しを渡せと手を出す天元。
それには応えず
「注いでやろう」
アシルは新しいグラスに
レモン水を注いだ。
「悪ィな」
それを受け取り、
そのグラスに口をつける瞬間…
私は動いていた。
その水を飲ませまいとして。
飲ませてはいけないような気がした。
くいっと腕を引かれた天元は
咄嗟にこちらを振り向いて
「…なんだ睦?」
さも不思議そうに私を見つめた。
あれほどの怨みが、
こんなに簡単に晴らせるものだろうか…
天元だって、
そんな事に気づかない人じゃないのに…。
「飲んじゃ、だめ」
声が震える。
確信はない。
もしかしたら
改心したアシルを
不用意に狐疑してしまっているだけかもしれない。
もしそうだったら、
自分の事を許せないかもしれない。
でも、
このまま信じて、
天元にもしものことがあったら、
私はその方が許せないんだ。
「…これをか?大丈夫だよ」
私を安心させるように
にこっと笑ってくれるけれど、
「…だめ」
私は何度もかぶりを振って
やめさせようとする。
「大方俺を疑っているんだろう。
そんなにすぐに信用などできないよな」
アシルの言葉を聞いて
合点がいったように笑った天元は
「睦が心配するような事はねぇよ。
このグラスも、ずっとここにあった新しいモンだ。
…喉乾いたんだけど?」