第21章 スルタンコラボ企画 〜睡蓮の昼寝〜
ふっと息を洩らしてしまい、
耳ざとく気づいた睦は
ん?と首を傾げた。
出た出た。
小鳥か、若しくは仔犬のようなその仕草。
俺の胸を鷲掴みにする睦のソレ。
それを当たり前のようにやってのけるこいつが
たまらなく可愛いワケよ。
その小さな頭をぽんぽんと撫でてやり
「…いい朝だなぁ」
全てが輝いて見えるのを
心のままに言葉に乗せた。
たった1人の女の為に
いつもの景色が美しく見えるとか…
…乙女じゃねぇんだから。
強い陽射しから
そこを通る人間を守ってくれるように
両手を伸ばす木々たちの間を行き、
少し開けた先にある
豪華なドアに向かっていく。
そこがどこなのかわかっている私は
繋がれたままの彼の手をクッと引いた。
「ん…何だ?」
歩を緩める事なく
顔だけ振り返った彼は
何でもない事のようにしているが…
「私は自分の所で待ってるわ?」
久々の逢瀬を邪魔するほど野暮じゃない、
…つもりだ。
「何言ってんだ。
今日はお前と離れる気はねぇぞ」
「わかってる。嬉しいけど…
今だけは別の方がいいでしょう?」
この人たちの関係性は何となく聞いたけれど、
肉体的な関係はあるみたいだし
夫と妻という間柄だ。
そこに私が顔を出したんじゃ、
おじゃま虫確定じゃないか。
そんなのイヤだ。
いや、向こうはもっとイヤだろう。
「なんで別の方がいいんだ?
構わねぇから来い」
グイッと力を入れて引っ張られ
私はその力に勝つ事ができない。
「待ってよ、雛鶴さんだって
天元と2人きりで会いたいでしょう。
野暮な女だと思われたくないのよ」
慌てて彼を止める。
だってあそこは間違いなく雛鶴さんの部屋だもの。
他の女性にこの人が会いにいくのなんか
悲しいから見ていたくないというのも、
この場から去りたい理由だ。
それでも彼は、頑なに私を連れて行こうとする。
「そんなこと誰も思わねぇよ。大丈夫だから」
大丈夫じゃないんだって。
何で愛した人が、他の女性に会いにいく所を
見ていなくちゃいけないのよ。
その辺の女心がわからないのかしら。
さすがは男だわ。
「可愛い女を見せびらかしたい男心が
わからねぇのかね…」
という彼の独り言は
ざわりと吹いた一陣の風にかき消されて行った。