第21章 スルタンコラボ企画 〜睡蓮の昼寝〜
「先方はなんと?」
「うまくいった。後で雛鶴に報告してくるよ」
「それは何よりだ」
「あぁ、泣いて喜んでくれたよ。
力になれて良かった」
嬉しそうに微笑み合う穏やかな親子を
交互に見遣った。
朗らかな関係性が見えて
私まで優しい気持ちになった。
「そうかそうか。
ご苦労だったな、ゆっくりするといい」
「あぁ、ありがとう。
それから…」
私の手をくいと前に引っ張り出して
自分の隣に並ばせると
「遅くなったけど…」
口を開いた。
途端、王様が目を見開いたのがわかった。
少し身構えた私に気づいて
天元が私の肩を抱き寄せてくれる。
「俺の大切」
私を見下ろして
あんまりうっとりした瞳で
そんな短い言葉で紹介されて…
えぇと…
何か言うべきなのよね…?
「はじめまして。睦と申します。
ご挨拶が遅くなり申し訳ございませんでした」
そうしてぺこりとお辞儀をするのが精一杯。
…で?
気の利いた挨拶なんて出てこない。
そんな大層な挨拶した事もない。
広い空間に沈黙が広がって、
どうしたものかそろりと目を上げる…
すると思い切り、王様と目が合ってしまって、
びくっと肩を竦めてしまった。
ど、どうしよう。
終わりか?みたいな目で睨まれた。
そうだよね、
ごきげん麗しゅうみたいな
よく聞くやつやるべきなのよ。
でもアレ、ほんとに言うの?
お話の中だけじゃないの?
…言うべき?
そう思って
私が助けを求める先はもちろん彼だ。
ごく自然に隣の天元を見上げてしまって
もともと私を見下ろしていた彼と
当然のように目が合った。
その途端ににこっと微笑まれて
あれ?良かったのかなぁと勘違いしそうになる。
だってこんな挨拶で良いわけないのに。
ふと見ると、天元の肩越しに
アーディルさんが微笑んでいるのが見えた。
…なんだかみんな柔らかいな。
でもそんな中、
「…気の利いた挨拶はできないのか?」
王様は冷たい声を私にぶつけた。
私は、王様のこの反応が1番正しいように
感じていた。
自分を気に入られるように
上手な挨拶をするのが常識なのかもしれない。
「そうですよね…。でも私、
テキトウな事を言うのが苦手なんです、
ごめんなさい。
心にもない事を言うくらいなら
気の利かないヤツだと言われた方がマシです」