第21章 スルタンコラボ企画 〜睡蓮の昼寝〜
「…そっちがお前の気持ちで良かった」
心底安心したように言った時、
ちょうど花売りのワゴンの前に辿り着いた。
「ほら、どれが好きだ?
今日は睦のベッドを花だらけにしようぜ」
まるで新しい遊びを思いついた少年のよう。
キラキラと目を輝かせるから
「うん!」
私もつられてしまう。
山のようにお花を積んだワゴンの向こうから
小さな女の子が顔を覗かせた。
「あっ!お兄ちゃん!
また来てくれた。あの時はありがとう」
にっこりと頬を染める女の子は
タタッと走って来て、私たちの前に立った。
天元はそこにしゃがんで
その子と目の高さを揃えると
ぽんぽんと頭を撫でている。
「あぁ、俺こそありがとな。
ただなぁ…俺あん時、
花の名前聞くの忘れちまって…」
「え!知らずに買ってたの?
大丈夫だった…?」
表情豊かで、なんて可愛らしい女の子。
天元の事を本気で心配しているようだった。
「大丈夫じゃなかったなぁ…
大失敗だ。女に贈る物の名前くらい
知らねぇのは失礼だとどやされた」
「………え?」
言った覚えのあるセリフに
私が声を発した事で、
女の子はパッとこちらを見上げた。
でも私はそんな事にも構っていられない。
天元は今、何と言った?
だが天元も私などには構いもせずに続けた。
「アレはなんて名の花だった?」
「チュベローズだよ。だいたいあのお花は
男の人が女の人にあげる物じゃないんだよ?
何回も言ってるのに
お兄ちゃんちっとも聞いてくれないから…」
「悪ィ悪ィ。でもあの小さくて白い花が可愛くて、
俺の愛しい女にぴったりだったんだよ」
「待ってよ、何の話…?」
耐えきれずに割って入った私をもう一度見上げて
女の子は急に慌て出した。
「お、お兄ちゃん!…」
私の様子を窺いながら
天元の肩を揺する女の子。
まるで『大丈夫なの?』と言っているかのようだ。
「ん…?あぁ、大丈夫だよ」
天元は私を一瞥した後、
女の子を安心させるように
もう一度頭を撫でてあげながら、
「あの花の贈り先、こいつだから」
しれっとそんな事を言った…。
あぁ、言ってやりたい事が山のようにある!
「そうだったの⁉︎わぁ…
お姉さんはお兄ちゃんの恋人さんなんだね!」
うっとりと見上げられ
私は妙な気分だった。