第21章 スルタンコラボ企画 〜睡蓮の昼寝〜
イヤな感じがする。
私の名を知っている。
という事は、ここに出入りする者?
それともよっぽど私について調べたか。
でもこいつは、声からして男だ。
この後宮に、王子以外の男が入れるのかな…
部屋に引き籠ってばかりの私には
考えた所でわからない。
「お前は、あの男を恨んでいるだろう。
強く憎んでいるはずだな?」
「…何者か知らないがお前には関係ない事だ」
はっきりと言い切ってやると、
背後に立つ男が息を呑んだのがわかった。
「男勝りな女だな。…見てくれとは、正反対だ。
気に入った。お前にチャンスをやろう」
「そんなものはいらない」
「本当にそうかな?」
「惑わそうとしても無駄だ」
甘い言葉には裏がある。
それくらい私だって弁えている。
「睦、お前はここから出たいと思っている。
これまでしてきたように、
色んな土地を渡り歩き、舞い、また踊りたいと
思っているだろう」
「…!」
そんな事まで知っているの…?
一体、誰なんだ…
「仲間と共に楽しくやってきた。
それなのに、あの男にその自由を断たれたな。
哀れな事だ。可哀想な睦。
解放しろと掛け合った所で答えは否。
あの男さえいなければ、お前はまた
自由な身だと言うのに…」
私をそそのかすような物言い。
巧妙な手口だと、わかっているのに…
その通りだと思ってしまう。
この淡い恋心はひとまず置いといて…、
それを抜きにしても
あの男にさえ見つからなければ
私は今でも楽しくやっていたのに。
こんな所に押し込められることもなく
苦しむこともなく…
好きな事を、していられたのに…
「俺の話に乗れば、お前はすぐにでも自由の身。
試してみる気は無いか。
お前にとっても悪い話じゃないはずだ」
「…どういう意味だ」
お前にとって『も』と、こいつは言った。
「私に手を下させ、
自分だけいい所を持っていくつもりだろう。
そんな口車には乗らないよ。帰って」
そう言い終わったとき、
私に向けられていたダガーナイフの刃が、
喉元に触れ、
チリっと、焼けるような痛みが走った。
「…なかなか賢い女だ。加えて強か…
俺の女にしてやってもいいが…
お前はその類は好かんだろう」
くくくといやらしく笑う。