第21章 スルタンコラボ企画 〜睡蓮の昼寝〜
ここから去りたい。
なのに、足が動かない。
…いや、そもそも
ここから動いたらダメなんだった。
楽しそうに連れ立って去っていく2人の声は
もう私の耳には届かない。
激しい焦燥感と、絶望感に襲われた。
うまく息ができない。
つらい…
だめだ、眩暈がする。
体の均等が取れない。
倒れてしまう前に、自分の部屋に戻らなくちゃ…
こんな所で倒れるわけにはいかない。
その気は無かったにしろ、
盗み聞きした事がバレてしまうじゃないか。
私はその一心で、一歩を踏み出した。
覚束なかった第一歩。
でも踏み出したら
もうその後は止まらなくて
転がるようにして部屋まで走った。
——ねぇ、私、大丈夫?
これ…
これ、嫉妬じゃないよね…
私は激しく打つ心臓を押さえるように
自分の胸元を握り締めながら
やっとのことで自分の部屋にたどり着く。
握り締めた手に、
あのペンダントが触れた。
…こんなもの…!
カッと頭に血が上った私は
足を止める事なく部屋を横切り
そのままバルコニーに出た。
そこからペンダントを投げ捨ててやろうと思い
首から引きちぎってやろうとしたが、
引っぱってもちっとも切れやしなかった。
チェーンの繋ぎ目を溶接してあるのだ。
くそぅ…!
私は躍起になってペンダントを引っぱり続けた。
切れない事がまた私の怒りを増幅させるのだ。
そのたびに、首の後ろを鎖が打ち
とても痛かった。
それでも私はやめる気は無い。
今夜、彼はあの人を抱くのだろう。
そんな事を考えると、私は胸を焼く。
なんでこんな思いをしてるんだ。
…おかしい!
あんな男、嫌いなはずだった。
どうだっていいはずだ!
悔しい…悔しい!
色んな感情がないまぜで、
だんだんと視界がぼやけていく。
涙が溢れそうだ。
何で私がこんな思いをしなくちゃいけないの。
理不尽だ。
そんな事をしていると、
私の背後でゆらりと空気が淀んだ。
ハッとした時にはもう遅くて、
私の喉元にダガーナイフが突きつけられていた。
「…声を出せば切る」
抑揚のない無機質な喋り方。
切る、だって?
「…切ってくれて構わない。
いっそ殺してはくれないか…」
涙に息を詰まらせ告げると、
声の主は僅かに笑いを含んだ。
「まさかあの男に絆されたわけでもあるまい?
なぁ、アイシャ…いや睦?」
