第21章 スルタンコラボ企画 〜睡蓮の昼寝〜
その日の夜。
何だか少し怠くって、
早めにベッドに入ったというのに、
まったく寝付けなくて…
気晴らしに、散策でもしよう…
自分の部屋から庭に出た。
ふと向こうに目をやると街の灯がきれいだった。
海は月の道を作って、
静かな風は遠くの椰子の木を揺らしている。
聞こえてくるのは、
優しい風が揺らす葉擦れの音。
ついでに私のほっぺたを撫でて行き、
程よく火照りを冷ましてくれた。
…熱でもあるのかな。
やっぱり部屋でおとなしくしていよう。
はぁ、と大きくため息をついた時、
聞き覚えのあるふたつの声が耳に届いた。
「天元様、今日は私の所へ来て下さいませんか?」
そんな言葉…
壁の陰から出ようとした所で、
何だかいけない事を聞いてしまったような気がして
無意識のうちに足が止まってしまった。
…どうしよう。
出ていけないし引き返せない。
今動けば絶対に…バレる。
だって足元、砂利だもん。
何で今ここでなの…
タイミング悪すぎて……。
さっきの声からして、
この間のあの女性だろう。
目元のほくろが色っぽかった。
物腰も柔らかで、髪も艶やかで。
顔を覗かせることはできないから
何をしているかなんてわからないけれど…
シュルっと衣擦れの音がする。
「ね、来て下さいますか?」
甘えた声。
きっと、体を擦り寄せたりしてるんだろうな…
見えないのって、
想像力が働くから厄介だな…。
「珍しいな。雛鶴の方から誘ってくるの」
「私だって淋しい時くらいありますよ」
少しいじけたような声…
すごいな、私には到底できない。
「淋しかったか?」
「はい。このごろ天元様、お忙しくて
ちっとも来て下さらないんですもの」
……イソガシクテ。
その一言がやけに耳についた。
「今日はお時間ありますでしょう?
どうか私の所でゆっくりして下さいまし」
「わかったわかった。可愛いヤツ。
朝まで、は難しいが
今夜はお前のとこに行く」
微笑みを含んだ優しい声。
私の胸がどくんと強く脈打った。
今朝、私の耳元で囁いたのと同じ声。
あの優しい声…
何だろう…なんだろう、これ。
へんな気分。
全身が心臓になったみたい。
或いは、私の耳元に心臓があるみたい。