第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
そうして私が
邸に向かって振り返ったのと、
私を閉じこめるような形で
それぞれの耳の横あたりに伸びて来た両腕が
門の格子を掴んだのはほぼ同時だった。
上体を屈ませて
私の顔と同じ高さに揃え
真っ直ぐに見据えると
「何で逃げた」
視界がぼやける程の近距離で
音柱様が不機嫌そうにする。
無意識に顎を引いた。
予想外の事に声も出せなかった。
だって
どうしてこの人は
私よりも先に中にいるの。
あぁ、でもそんなの
私の事を追って来たのであれば
この人のことだ、
簡単にできるだろう。
私が返事をしない事に
怪訝そうな表情で首を傾げた音柱様。
聞こえているのかどうかを確かめる為なのか
左の耳に顔を寄せると
ふっ、と息を吹きかけて来る…
「あぁあ…‼︎」
左手をそこに添えてザッと飛びのいたが
私の身体を囲っていた音柱様の腕に激突した。
「なにするんですか‼︎」
バランスを崩した私の肩を
その腕で支えてくれながら
「耳になんか詰まってんのかと思って」
シレッとそんな事をぬかす。
思ってもない事をぬけぬけと。
私は音柱様の腕からスルリと抜け出し、
無駄だとわかっていながら
走って邸へと向かった。
不意をつかれた音柱様。
さすがに初動が遅れ
私にしては結構な距離をつけたと思う。
「あ、」
小さく声を上げた音柱様の大きな手が
私の腕を掴むのに
そう時間はかからなかった。
「なぁちゃんと話ししようぜ」
私はそれには構わず
腕を振り払い更に走り出す。
でもすぐに捕まって足が止まってしまう。
更に振り解くものの結果は同じ。
「何してんだ!俺から逃げられると思ってんのか」
まったく思い通りにならない私に
いい加減イラついたのか
音柱様は少しだけ声を荒げた。
「話なんかありません…!」
「うそつけ。あるだろ」
「あっても聞かないもん」
「何でだよ」
「また…」
つい言いかけて、やめた。
でもそれを許す音柱様じゃない。