第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
「あんな意地悪言われたくらいで
簡単に辞めるくらいなら
初めからこんな所には来ません」
そう、だろうな。
全てにおいて真剣に取り組む
あの姿勢を見れば一目瞭然だ。
大きな覚悟を持ってここに来たはず。
良家の娘だよな。
それが今や
鬼を相手に刀を振るってんだから
頭が下がる。
しかも、強い。
何がお前をそこまで動かしたんだろうな。
やっぱり、両親の死なのか…?
「音柱様…?」
黙り込んだ俺を呼ぶ…
…それ俺を呼んでんのか。
なぁ、知ってるか?
それ俺の『名前』じゃねぇんだよな。
なぁんて、そんなの今更か…。
もし、隊士でなくなった暁には
ちゃんと名前で呼んでもらお。
「なんだ?」
「もうひとつ、握ってみてもいいですか?」
そう言って
睦は左手を差し出した。
本気で訓練のつもりでいるのか、
料理っぽい事ができるのが嬉しいのか…
ひどく前向きに握り飯を作りたがる。
「あぁ、」
そこにまた、ひと掬い乗せてやったが、
今度は動かずに、そのまま…
「ん?」
「もっとください」
「もっとったって…」
小さな掌には、こんもりとした白飯…
「それ以上乗らねぇだろ」
「じゃあ、…はい、」
左手の隣に右手も添えて
睦はその範囲を広げた。
「これなら乗ります」
「なんだ、そんなに腹減ってんのか?」
「えッ?違いますよ!」
睦はほんのり頬を染めて
きゅっと飯を握る。
「だってさっきのじゃあまりにも小さいから…
あれじゃひと口で終わりです」
え、お前のひと口そんなでかいの?
そう訊こうと思って…
「音柱様は大きいんですから」
俺より先に
睦がそう言ってくれてよかったと
心から思った。
そうだった。
俺から言ったんだ。
それは俺のだって。
だからって
わざわざ握り直してくれるのか。
ひと口でもいいけど、
でも俺のために握り直してくれるのも
素直に嬉しいな。