第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
「腹減ったなら俺がつくってやろうか」
「何でですか」
「何でって…」
「私の仕事だったはずです」
「だってお前、包丁握れねぇだろ」
「…そ、」
そうだった‼︎
「無理させんのもなぁ…」
「役立たずかぁ…」
「こら。ただの怪我人だろ」
「これからもっと役立たずになります…」
「おい、やめとけよ」
音柱様はひょいと私を下ろすと、
「メシのこと考えてたら
俺も腹減って来た。
すぐに食えるモン持ってくる」
私の顔も見ずに部屋を出て行ってしまった。
ちょっと
そっけなく見えるのは気のせいだろうか。
…何か、怒らせるような事したかな…
俺の理性、ってのは
それこそ役立たずだ。
包丁を握れない睦の右手なんかより
遥かに役立たず…。
俺に甘えて泣いた。
首に抱きついて更に甘えた。
予想を超えて来た。
そんなに素直に甘えてくるとは
思っていなかった。
睦の事だ。
迫る俺を容赦なく突っ撥ねる筈だったんだ。
それが、
あんなふうにしてくるなんて誰が思うよ。
逃げるから追うんだ。
撥ね付けられると思ってるから
あんな勢いで押してんのに、
すんなり受け入れられたんじゃ
押し合う力のバランスが崩れて
共倒れしちまうだろ。
あいつめ、
俺の押しに慣れやがったのか。
いや、
今弱ってるからだ。
あんな事があって滅入ってる。
誰かに縋ってなきゃいられねぇんだな。
それじゃダメだ。
歯止めが効かなくなる。
受け入れられたのかと勘違いする。
弱ってる隙を突くとか
最低か。
これはまずい。
理性理性……
「おにぎり…?」
俺がお櫃をもって部屋にもどり、
しゃもじで白飯を掬って
手に乗せるのをじっと見ていた睦が
大きな瞳を煌めかせた。
ぎゅぎゅっと握ってから
大皿の端に乗せる。
「あぁ。睦もやるか?」
答えを聞かずともわかってるけどな。