第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
そう伝えようとした
私の言葉を押しのけるように、
彼は続きを口にした。
「そこまで貫くのって
並大抵じゃ出来ないと思うんだ。
そんな櫻井が
ちょっと気を抜いて違う事をしてみてさ
そっちが良くなったんだとしたら
きっとそれが正しい道なんだよ」
「ちょっと待ってよ私は…」
「わかってるよ。だけど、
いいじゃないか。少しくらい怠けちゃってもさ」
他の2人も声を上げて笑ってくれて
私の事を励ましてくれているのがわかった。
それは、
私が木刀ではなく、
ほうきを持っているからなんだろう…
私は、どうにか動けるようになったものの
握力が著しく低下していて
ものを満足に握る事ができなくなっていた。
これでは体力回復どころの話ではなく、
もう少し回復するまでは
簡単な事から始めましょうという事で
この蝶屋敷の庭掃除をさせてもらっている。
もちろん、蟲柱様の許可のもとだ。
日輪刀や木刀の代わりに
ほうきを握れと言ったのも蟲柱様。
脇腹の方は隠して
腕の傷だけ診てもらった結果
そんな診断をくだされた。
この傷をうけてから
もう1ヶ月が経とうとしているのにな…
傷は塞がった。
鬼の毒で爛れていたという皮膚も、
音柱様の薬のおかげで
何とか元通りになった。
でも
力だけは戻らないまま…
「ありがとう…」
この3人は、
私の不安を感じ取っているんだろう。
この手が元通りになるのかどうかの不安。
そして、あの時の別れ道を
複雑な気持ちで見ているに違いない。
音柱様に揃って呼ばれて
もしかしたら
自分たちが行く事になっていたかもしれない、
そんな任務で
私がこんな大怪我を負ったことを
気にしているに決まっている。
もしかしたら何処か申し訳なく
思っていたのかもしれなかった。
なんとなく
そんな雰囲気が見てとれた…
「ありがとう。あんまり気に病まずに
いろんなことに目を向けてみるよ」
そう言って笑う事が、
私を励ましてくれた優しい仲間たちへの
1番の恩返しのような気がしていた。