第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
前腕の長さ分、縮まった距離。
それがやけに近く感じて
「な、なんですか?近いです」
私はパッと顔を背けた。
だけど音柱様はそれについて来て
真正面から顔を突き合わせ
「俺に、行ってほしくなかった?」
声をひそめる。
まるで
最初からわかっていたかのような口ぶりだ。
その通りだったのと、
心を読まれていたのとで
恥ずかしいやら腹が立つやら…。
「違います」
ぷいっと
また反対側へと顔を向けるものの、
音柱様は更に私にはりついてくる。
「そっか。じゃそう思え」
むちゃくちゃな事を言いながら
徐々に迫ってくるのがわかった。
「あの…!何のつもりですか、」
誰かとここまで近づいた事がない。
いや、親とはある。
他人とは初めて。
しかも何だかこの人は、
私をからかっているようにしか思えない。
それがまた腹立たしいのだ。
「何のつもりって……」
右へ左へと逃げ回る私をしつこく追い回し
「俺の気持ち知ったくせに
そんな言い方するのかよ…」
突然、真剣な声を発した。
「…や、っ…なに言ってるんですか…」
自分の肩に顎が乗っかるくらい
思い切り左を向いた私の頬に
当たってしまいそうな程の距離に
音柱様はその頬を寄せる。
このまま、彼の方を向いてしまえば
互いの唇が触れてしまいそうな距離だ。
自分の耳にまで届くくらい大きな音が…
心臓が痛くなる程の鼓動が、
私の熱を全身に広げて行く。
動けなくなって、
どうしたらいいかわからなくて
唇は震えてうまく話せないし
その逞しい肩を押し退けたいのに
この腕はいう事を聞きそうになかった。
これは本気かな。
それともふざけてる?
私で遊んでる…
だってこの間まで
私にひどいことばっかり言っていた。
私の顔を見れば、
突き放すような事ばかり…。
気にしないようにって思うほど
頭の中を支配する音柱様の言葉たち。
太い針のように
心に突き刺さって抜けなかったのに。
それなのに態度が急変したのは
一体どういう事なのだろう。
いきなりそんな事を言われたって
混乱するだけだ。
もうどうにもできなくなった私に
「そうやって…俺のこと考えてろ」
あろうことか
そんな囁きと共に
私の耳へと口づけたのだった。