第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
俺を振り解こうとする睦の
小さな頭を抱え込む。
薬を一滴も零さないように
口唇も離さない。
喉を潤す程もない少量の液体が
奥へと流れ込むのを確認した後も
俺はしばらく睦を離してやれなかった。
何のつもりでそんな事をしているのか
自分にも全くわからず…
ただ、強く哀れなこの女を
俺がどうにかしてやりたいと
そんな熱情が渦巻いていた。
「ん、…んん…」
口内に広がる熱に
浮かされたような喘ぎを静かに上げながら
睦がぼんやりと薄目を開けて
状況の確認をする。
それでも尚、口づけを継続させると
束ねた手首が
離してもらいたそうに引き付けるから…
どうせこの細腕じゃ
俺を押し退ける事なんか出来やしねぇし、
それくらい構わねぇかと
両の手を解放してやった。
自由になった睦の手は
ゆっくりと下りてきて
俺の髪をそっと撫でると
耳の辺りに充てられる。
どうやらそこを握る力は入らないらしい。
さっきの力がウソのようだ。
やめろという相図なのか、
それともこのまま甘えていたいのか
計りかねた俺は
少しだけ口唇を浮かせてみた。
言い訳をする時間くらいならやる。
『やめろ』でも『もっと』でも
何でも聞いてやるよ。
ただ何を言われようと、
もう1度その唇もらうけど。
だけど、睦が口にしたのは
そのどちらとも違っていた。
ただひと言、
「ぃきてる……?」
と、掠れ切った声で。
まだ夢現。
さっきの戦闘中に意識を失い、
目覚めたのが今なのだから無理もない。
記憶も飛んでいる事だろう。
「生きてるよ」
前髪を整えてやり
指の背で額に触れた。
血の気の引いた青白い顔色。
一気にやつれた印象だ。
「ぁいつ、は…」
「鬼は、お前が斬ったじゃねぇか」
静かに見開かれる両の目。
「わ、たし…が…?」
俺はわざと、微笑んでやる。
「あぁ。よくやったな…」
ちゃんと仇をうてた。
そう褒めてやると
みるみる大きな瞳に涙が溜まっていく。