第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
「おはー」
引き攣った笑顔が
ドアの隙間から覗く。
「俺の顔見て逃げるとか超失礼くねぇ?」
つま先を潰す勢いでドアを閉めてやると
私の顔の高さに長い指がかけられて、
一気に引き開けられてしまった。
それでもドアノブを必死に引き戻そうと
もがいていると、
「…っお前マジかよ…!
この俺様を無視すんのか、いい度胸だな」
「なんでうち知ってんだよ!」
「スマホ見ろよ!無視しやがって!」
「あ…ッ、」
あの連投はこの人か…!
「だから何で……」
そうか!
……不死川め!
「何のご用ですか‼︎」
がんばって閉めようとしているのは
私の方だけで、
彼はかるーくドアを押さえている程度。
力の差がありすぎて、
こんな事をしていたってムダだ。
私が仕方なく、
ドアノブを握ったままその場にしゃがみ込むと
彼もドアから手を離して、
同じように私の前へとしゃがんだ。
「…調子、悪ィの?」
…そんな心配されると
大変申し訳ないのですが。
「悪くないよ」
「そっか。ならよかった」
安心したのかニッコリ笑い、
私の腕を掴んで立ち上がらせる。
「お前が大丈夫ならいい。
これ、土産。じゃあな」
彼は晴れやかな笑みを湛えたまま、
私に取っ手のついた箱を押し付けると
くるりと踵を返して、
躊躇いもなく去ろうとした。
「え、…ちょっと待って、それだけ?」
「それだけそれだけ」
後ろ手にヒラヒラと手を振り
顔も見せずに門を出ようとする。
えー…?
そんな事ある?
「暑いのに…お茶くらい飲んでって」
「そうするー」
即座に回れ右して戻って来る彼を見て、
私は多分、謀られたんだろうと感じていた…
中途半端に常識があると、
こういう事になるのだ。
ただこれを教訓にした所で、
私はまたきっと、同じ事を繰り返すのだろう。
リビングのソファに座る大きな人は
居心地悪そうにあちこちを見回していた。
…いや、興味深そうに?
「どーぞ」
麦茶を淹れたグラスを彼の前に置くと、
中の氷がカランと涼しげな音を立てた。
ついでに、彼が買って来てくれたプリン。