第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
『俺にこんなのがいいんじゃねぇかなって…
櫻井が思ったものでいいから
それを買ってくれたら嬉しいな』
キャンバスと筆を買ってやった時に
そんな話をした事を思い出した。
あいつは、俺にコレを選んだって事か。
……マジでコレ?
俺に?
カバンにつけろってのかよ。
でも、…なんでもいいと俺が言ったのだ。
あいつは、
嫌いなモノだったらどうするかと訊いた。
なのに俺が、
お前がくれるなら
何でも好きになると言ったのだ。
確かにコイツは可愛かった。
だけどあん時は、
隣にお前がいたからで…
今はさ、ケンカ、っつーか…
雰囲気悪ィし……
俺のせいだけど。
付箋に並んだ文字を繰り返し目に焼き付ける。
…これ、別れの挨拶って事ねぇよな。
ありがとうございましたって、
ヤケによそよそしくね?
いや、怒ってる相手に
軽々しくはなれねぇのかもしれねぇけどさ。
…全部、俺が悪い。
誤解して血ィのぼったのも
あんな言い方したのも、
謝れなかったのも。
それにしても、
桜柄って…季節感なさすぎだろ。
……桜柄。
俺はそのピンクの付箋を持ったまま、
キャンバスへと目線を滑らせた。
しばらく、
付箋とキャンバスを
行ったり来たりさせてみる…
「……あれ、?」
散々、わたがしわたがし言って来たし。
あいつも何も言わなかったから、
もうそうなったようなモンだったけど…
この絵、もしかして
桜の木なんじゃ、ねぇの…?
しかもよく見たら、
白いキャンバスだってのに、
同じ白色で、木の根本に…
なんか人型みたいなのが……
…それは、
俺があの入学式の日に見たのと
あまりにも似ていて…。
絵が拙すぎて
すぐには結びつかなかったが…
でも、これが桜で、
その白いのが人なのだとしたら
間違いなく、俺が見た光景そのままだ。
これは一体どういう事なのかと、
俺は顔を上げ廊下を見遣った。
今、焦った所で、教室には誰もいねぇ。