第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
もうすぐ完全下校時刻。
明日は土曜。
誰に見られる事もねぇだろう。
「いいの…?」
「あぁ、それくらいどうって事ねぇよ」
「ありがと」
そう言って笑う顔は
本当に嬉しそうで、
俺はもうどうにかなってしまいそうだった。
ひとつ、零してしまった気持ち。
俺の中から溢れた想いが
次も次もと、外へ飛び出したがってる。
どうして、こうも欲張るのか。
理性を保って、
ゆっくり進まなければ
こいつは逃げ出して、
きっと取り返しがつかなくなる。
それがわかっているのに
この気持ちが今にも暴れ出そうと
俺の中を駆けずり回っていた。
ひとつ間違えば
もう取り返しはつかねぇ。
あの時してしまった、告白のように…。
翌々日、
日曜。
もちろん学校は休み。
ひとり部屋でボーッとしてるのも飽きてきた。
俺とした事が、ひとつ抜け落ちていたのが、
睦の連絡先を知らねぇという事だ。
別に会ったりしなくても、
それがわかってりゃあ会話は出来るわけで…
あーあ…
絵、か…
俺も絵でも描こうかな…
まだ朝だし、時間もあるし、
画材屋でも渡り歩いて
新しいものを仕入れるのも悪くねぇ。
空も晴れてるし…。
セミはうるせぇし、クソ暑そうだけど、
ジッとしてるのももったいねぇような。
そうだ。
こんな時は何も考えずに
あてもなくぷらぷらしてると
いいモノに出逢えたりする。
ペンだったり、筆だったり…
筆か…
今のヤツ、だいぶくたびれてるしな…
使い慣れた筆はなかなか手放せねぇが。
新入りを馴染ませるのも大事だ。
よし。
俺はエアコンの効いた天国から、
熱波の地獄へ踏み出す覚悟を決めたのだった。
それでなくても、
連日の猛暑日。
それなのに、自ら人混みに飛び込むなんて
こりゃもう自殺行為だ。
ただ
背が高ぇのも、こんな時には役に立つ。
頭ひとつ抜きん出るだけで
息もしやすいってモンだ。
贔屓の画材屋まではあと数十メートル。
この暑いのに、
さすが日曜の人出は容赦なく…
上から見下ろす人々は
思い思いに過ごしていて
みんな楽しそうにしている。