第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
ウソみたいにスルスル出てくるじゃん。
「イヤミを言うなよ。
俺は素直なだけだろー。
ほんとのことしか言わねぇもん、なー?」
そうしてなぜかハコフグに話しかける。
「めっちゃついてくるなお前…
この指がそんなにおもしれぇか」
満更でもなさそうに彼は笑い、
その声に誘われて私は思い切り上を向いた。
背中から私を囲うように立つ彼は
下から見上げてもやっぱり綺麗だった。
楽しそうだな…
自分で言うだけのことはある。
すごく素直で、
何事も楽しめる人なんだな…
私もどうしてそうなれないものか。
この人の横にいれば
もしかしたらそうなれるのかな。
「俺のこと好きなのー?」
嬉しそうに笑う宇髄くん。
随分とご満悦だ。
「仲良しだね…」
本当に彼の指の動きについてくるハコフグ。
私もそれを目で追った。
「なによ、やきもちか?」
ニッと笑って私を見下ろし、
「睦とも遊んでやろうか」
そう言って指をくるくる回して見せる。
……魚と同じ扱いか。
「いらないよ。私はハコフグと遊びたいの」
「そっちかよ」
ちょっと項垂れて、
「睦が、お前のこと好きだってさー」
再び水槽に目を移した。
ツツ、と指先を私の目線まで伝わせて
それに誘導されたハコフグが
ふわりと下りてくる。
四角いフォルムがやっぱり可愛い。
愛嬌のある顔も、コミカルな動きも
小さなヒレも目を引く色もなにもかも。
「可愛いな…」
「変わったのを気に入るんだな」
「ちっちゃくて可愛いでしょ?」
「確かにちっこいのは可愛い」
私の顔の前を彼の指が行ったり来たり。
それにぴったりくっついてくるその子も
私の前を行ったり来たりした。
「宇髄くんの指、お友達だと思ってるのかな」
一生懸命に食らい付いてくる姿が
可愛くて仕方ない。
「もしくは腹へってて
エサと間違えてるかだな」
「ふふ。食いしん坊でもいいな…」
どちらにせよ可愛い事に変わりはない。
スッと指を引いた彼。
必死になって追いかけていた指が
なくなってしまったのにも関わらず
その子は指がなくなってもまだ
その場にとどまっていてくれた。
まるで、魔法の余韻に浸っているみたいだった。