第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
「………わぁ、」
横に広い水槽を、
歩いてその子の後を追う。
私の目を奪ったその子は
きっとハコフグ。
黄色くて、黒い水玉…
おしゃれで変わった形の子…
…ハコフグってこの辺でとれるのかな。
迷子かな?
胸鰭を細かく動かして
飛んでいるみたいに静かに泳ぐ。
真っ直ぐに泳ぐその子を追っていると
追われた事に気づいたのか
その場でピタリと止まり
向きを変えて奥へと行ってしまった。
あぁ…嫌われた…
……いや、嫌われたんじゃないや。
そう。
そっぽ向かれても
嫌われたわけじゃ、ないのに…
「睦」
「!」
名前を呼ばれてハッとする。
いま、何を考えてたんだろう…
私…
「なぁに」
水槽の中から目を離さずに、
多少の動揺を抱えたまま
返事だけをしてみる。
水槽の、分厚いアクリルガラスに映った彼が
立ち上がったのが見えた。
そしてそのまま、
私の隣に、立つ…
と思っていたのに。
まさかの、私の背後…
きゅうっと肩に力が入って、
水槽に突いていた手に
ぎゅっと拳を握った。
私の頭上から水槽を覗き込み、
視界を確保するかのように
両手を庇みたいにしてかざしながら
「…中、見えてんのコレ?」
「……」
わざと…?
こんな事するのは…。
だって水槽覗くだけなら、
隣で充分だよ。
気にするな、なんて言ったくせに、
気にさせる気満々じゃん…!
ずるいでしょこんなの。
だってさっきの告白がなければ
こんなの何ともなかったに違いないんだ。
くそぅ…
何ともないフリをしてやる。
「お、なんだお前。可愛いな」
水槽を人差し指でつつきながら
自分の鼻先に寄ってきた
さっきのハコフグに話しかけた。
「お前らにこっちはどう見えてんだろうなぁ?」
彼がくるくると指を回すと
ハコフグはそれについてくる仕種をして、
……
「可愛い…」
「あぁ、お前ほどじゃねぇけどな」
「……」
「あ」
つい口が滑った、と、
水槽に肘を突き
その手で口元を塞ぐ。
それは、
さすがに聞かなかったフリは出来そうにない。
「いいね、色男はそんな台詞
簡単に口にできて」