第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
走った。
すごく走った。
暑いって言ってるのに。
あぁ…
何がって、
止まった時が1番暑いんだよ。
汗が吹き出して、
身体中を熱が駆け回る。
なのに、
「あぁ…涼しい…」
私は目の前を浮遊するものに癒されながら
冷たいガラスに全身でもたれかかっていた。
ただ今の時刻17時28分。
閉館まで30分以上を残して辿り着いたのは
寂れた小さな水族館だった。
水族館、というか、魚の展示程度の施設
と言った方が正しいかもしれない。
こんなところがあるの、
知らなかった。
徒歩圏内にこんな場所があったなんて。
海まで歩いた事はある。
でもここの事は知らなかった。
小さな施設。
入り口の自動ドアを入ると
15メートルほど先に大水槽があって…。
大水槽といっても、幅10メートル程の
こじんまりとしたものだけど。
その中を近海で取れる魚たちが
優雅に泳ぎまわっていた。
入り口から直線上にある水槽は
そこからの光を映してしまい、
自分が影にならなければ
水槽の中を窺い知る事ができなかった。
無料だし、
文句は言えないけれど。
その脇に、円柱の水槽がいくつか並んでいて
そこにはエビや小さな魚が展示されていた。
それにしても、
「涼しい…」
その上、
「癒される……」
後ろでは彼が、
壁側にくっつけてあるベンチに座り
多分私の背中を見てる…
それはもうぶっすぶす突き刺さる視線。
魚に集中なんかできたもんじゃない。
でも、それは
私が意識してるから、
というのもあるのだ。
不意打ちでくらったまさかの告白。
それに心乱されていた私は
さっきからそわそわふわふわしっぱなし。
何でもないフリを決め込んでいるのは
彼がそうして欲しそうに見えたからだ。
本当は、もう
喚いて暴れ出してしまいそうなんだよ。
私は自分の好きな人を追いかけるばかりで
まさか自分が誰かに想われているだなんて
当然ながら考えもしなかった。
人に、…誰かに想われていると思うと
どこか落ち着かない。
どんな顔したらいいかとか
わけがわからなくなる。
そんな時、私の目の前をスッと、
四角い魚が横切った。