第41章 輪廻 〜if〜 後
「お前らさぁ、真面目にやれよ」
「真面目ですよぉ」
真面目にやっているというそいつらは
へらへら笑ってごまかす。
何を描いたかと言えば
アリ1匹だ。
画用紙いっぱいに
ドでかいアリを写実的に描いたのであれば
芸術性を認めてやらんでもないが
A3の画用紙に等身大だ。
「時間いっぱいちゃんと描けよ」
まぁ気乗りしねぇ時に
絵なんか描けたモンじゃねぇ。
それはわかっているが、
こいつらはフザけてるだけだ。
「はーい」
テキトーな返事をしたものの、
何か描かなければと思ったのか
そいつらは方々に散って行った。
まぁ、素直でよろしい。
ふぅとため息をつき、伸びをする。
今日はなかなかの小春日和だ。
日差しが強い。
そう思って空を見上げると
冬の空に燦々と、ギラつく太陽。
風もなく、写生をするにはもってこい…
しかも校舎からは、
愛しい女が俺を見下ろしていると来れば
やる気も出てくるってモンで。
授業が始まる前に、
なにやら可愛い事を言われて
有頂天になっている俺は
帰りは一緒に買い物をするか、
それとも何か食いに行くかと
授業中なのにそんな事を考えていた。
だって俺のことをかっこいいと言いやがった。
ちょっと前では考えられない事だ。
先生してる姿がかっこいい、
なんて言われたら
先生やっててよかった、
とかアホな事を考えちまうだろー
睦め。
そんな事を思って
校舎の4階を見上げると、
睦がそこに…
いる、にはいるが様子が…
おかしい…?
こちらに背を向けて立っている。
俺を、ずっと見ていると言ったのに…
言った通りにしないヤツじゃねぇ。
何か話してるのか。
…誰と…?
あそこは美術準備室だ。
この時間に近づく人間なんかいないはず。
だが睦が誰かと話しているのは事実。
——なんだ、言い争っているように見える。
学校では目立たないよう、
別人のように大人しくしている睦が
あんな姿を曝すなんておかしいだろ…
嫌な予感が拭えない。
…まさか…
そう思った瞬間、授業や生徒や、
何もかもがどうでもよくなり、
そこにいたクラス委員の男子生徒に
この後を任せて
俺は校舎に向かって全力で駆け出していた。