第39章 輪廻〜if
さすがにこの状況で
保護しねぇワケにはいかなかった。
家は失くしたと言ったきり
意識を失ってしまった櫻井。
仕方なく車に乗せて
とりあえず自分の家に運んだ。
触られんの嫌なのに悪ィなと
心の中で謝罪をしつつ…
あの少食っぷりを見れば当然だが
見た目通り、なんて軽さ。
1度帰宅したはずが未だ制服姿。
ただ昼間見た時とは違って
少し着崩していた。
いつもきっちり着ている櫻井にしては
なかなか珍しい画だ。
このくそ寒い中、
上着はなくブラウス1枚。
当然身体は冷え切っていて
こいつの言う通りあんなとこに居たままなら
朝には文字通り、
心臓まで冷え切っていた事だろう。
…それを望んでいたのかもしれないな。
小さな身体を自分のベッドに横たえ
毛布でくるんでやる。
呼吸は浅く、鼻先に耳を近づけて
やっと確認が取れるくらいだった。
ちゃんと、生きてる…
櫻井の保護者への連絡…
それが頭をよぎったが、
なんとなく悪い予感がして
今晩はそれをするのをやめた。
本来なら許されない事だろうけど。
連絡先がわからなかったでは済まされない事。
学校に戻ってでも
ちゃんとすべきなんだろう。
でもこいつは、
家を失くした
と言っていた。
てことは、男じゃねぇ。
ダチからの嫌がらせ、でもなさそうだ。
とすれば、
家の方に問題があるはずなんだ。
世の中の習わしとして、
何であろうと親元に帰らせるのが
正しいとされる行いだろうけど。
俺はそんなものより、
大切なものがあると思うんだ。
反抗して帰らないわけじゃねぇ。
別の何かが、あるんだよな?
でなきゃ、頬の湿布がそのままなワケがねぇ。
これは、あの日俺が貼ってやったものだ。
保健室にあった、ペラッペラの。
左下に、メーカーの名前が入ってる。
家に帰って、母親なり父親なりが、
取り替えてやる事もねぇなんて
おかしすぎるだろ。
まさか家でまでマスクをする事もねぇはずだ。
ここまで青くなっている頬を見て
何もしねぇ親なんて、もう親じゃねぇ。
娘がこんなにでっかい湿布を
頬に貼っつけて帰って来たら、
どうしたのって騒ぎ立てるだろうに。
そんな様子もねぇ親のいるとこに、
本人の許可なく送り返すほど
バカじゃねぇつもりだ。