第39章 輪廻〜if
くったりしたまま
動かず話さずな私に焦れたのか
先生は私の顔を覗き込んだ。
「こら櫻井、
俺はお前を助けてもいいのかよ?」
瞼を開けるだけの力もない。
そばに先生がいてくれるからかな、
すごく、安心するよ。
この声、聴いてるだけでいいなぁ…
「助けちゃ、…だめ、」
「櫻井…!」
だって助けて、って言ったらさ、
本当に助けちゃうんでしょ。
「私は、このまま…ここにいる…」
「それ、俺犯罪者になるヤツだな」
「大丈夫、…誰も、見てないよ」
「アーホ、俺が見てるだろ」
「黙って、たら?」
「良心の呵責」
「……そんなもの、あるの?」
「お前俺のこと何だと思ってんの?」
違うよ、
先生がどうこうじゃなくて。
「大人なんか…きらい…」
あぁ…意識が遠のいていく…
ほら、先生が現れたりするから。
ホッとしちゃって…
もういいかなって……
「私の、周りには…ろくな大人がいない。
腐ったのしか、居ないの」
「…そっか」
そうだよ。
「安心しな。
俺の周りにゃそんなんいねぇから」
「ウソ……」
「はいはい。おい、車乗れ。家どこだ」
「……そん、なん…失くした……」
そう、失くしたの。
もう帰らない……
目立たないと思っていた優等生。
それがこの頃やけに目についた。
動向がおかしいというか、
今までとは明らかに何かが違う。
挙動不審に加えて、情緒不安定。
あれきっと、てめぇでは気づいてねぇやつだ。
そう気づいた俺は
近づく機会を窺っていた。
自然体を装って近づける機会を待っていた…
決まった友人はいない。
ほぼ1人で行動する櫻井睦。
それは好都合だった。
邪魔が入らないからだ。
間違いなく、
家庭もしくは恋人に問題がある。
おかしな怪我の仕方、
その理由をヘタな嘘で
ごまかさなくてはならない事情も。
こっちが歩み寄ろうとしても
全力で拒否された。
望んでもいねぇのに勝手な事をするワケにはいかず
おとなしくしてはいたものの…。