第20章 柱稽古とお館様
「ごめんください、悲鳴嶼様。月神です、今日からお世話になります」
夕暮れ前にどうにか山を登りきり無事に行冥の屋敷へ辿り着いた。
天元の稽古でも思ったが、やはり山の上は空気が薄く息も上がりやすい。
その分緑に囲まれていて、厳しいと予想される稽古をしていない今は清々しい気持ちで満たされる。
今のうちにこの空気を堪能しておこうと大きく息を吸っているところに、屋敷の戸が開いて行冥が姿を現してくれた
「よく来たな。だが今日はもう日が暮れるので稽古や力に関しては明日から行う。前の柱のところで稽古をして疲れているだろう?風呂に浸かって飯を食べ明日に備えなさい」
いつも通り憂いを払うように念仏を唱えてくれる行冥に改めて頭を下げ、お言葉に甘えて今日は休ませてもらうことにした。
「ありがとうございます。今日は全てお世話になってしまいますが、明日からはしっかり働かせていただきます!もちろん稽古や力の向上には影響を及ばないように致します」
世話になる以上出来ることは全て受け持とうとする更紗に、行冥は念仏を唱えるだけでなく両目から涙を流し始めてしまった。
「あまり無理はするな。煉獄にも言われていると思うが、月神が倒れてしまっては元も子もないからな」
「ありがとうございます!師範には口を酸っぱくして言われておりますので無理は致しません。これでも無茶をしないように進歩したのでご安心ください」
本当か微妙なところだが、ひとまず今日は行冥に部屋に案内されて一日を終えた。