第20章 柱稽古とお館様
それに耳を傾けていると、穏やかだった表情がみるみる険しくなる。
「般若が阿修羅に笑顔向けてるぞ」
「正確には仏と思しき阿修羅だけどな。いやぁ、治癒してくれる時は優しくて可愛いんだけど稽古の時は阿修羅だからなぁ……月神は」
更紗に関しては褒め言葉も含まれているが、実弥に関してはもう悪口でしかない。
聞こえないと思っているのだろうが、柱の耳の良さを侮ってもらっては困るというもの。
未だにコソコソ話を続ける剣士たちの望み通り、実弥は般若の形相でゆっくり振り返って木刀を腰から抜き出した。
「てめぇら全部聞こえてんぞォ!お望み通り般若の如くてめぇら扱き倒してやらァ!あと、あいつの前で阿修羅なんて言ったやつは命ないと思えェ!」
剣士たちの悲鳴は僅かに更紗にも届いていたが、いつもの事だったので笑顔を零すだけだった。
こうして仏と思しき阿修羅は機嫌よく先へ進んでいった。
次に目指す場所は山奥に屋敷を構えていると話に聞いた、鬼殺隊最強と謳われる柱、悲鳴嶼行冥の元である。